つのコラム
尾鈴山
「ほらみて!あれがけつ山だよ。」と子どもが指差す山を見ると、なるほど尾鈴山の4つ左隣にお尻みたいな山がある。 勤めるデイサービスで利用者に話すと「あっはっはっ!あれはふたご山だよ。子どもの発想は面白いね。」と笑う。
どれがどれだかよく分からないが、万吉山、神陰山、矢筈岳、畑倉山などがある。湯の本地区の利用者のご家族は「あそこの山に雲が掛かると雨が降るって聞いたとよ。本当に当たるっちゃが。」と洗濯物は室内に干したと言う。確かにこの日はお昼から雨が降り出した。へぇ、昔の人はすごいなー。空を見上げ知恵と経験で観天望気をされていた。
更に戦争中には兵隊さんは尾鈴神社にお参りをして出征されたそうです。これもデイの利用者さんから聞きました。
都農駅からは尾鈴の山並みが美しく見えている。隣の川南や生まれ育った高鍋からはこんな綺麗な山並みは見られない。それでも西都児湯の小中学校、高校の校歌には尾鈴のフレーズが掛かっている。JAもここら辺では尾鈴やし。都農と尾鈴山は深い関わりがあるのだな、としみじみ思う。若山牧水も尾鈴山を詠まれています。
「ふるさとの 尾鈴のやまの かなしさよ 秋もかすみの たなびきてをり」
子どもの頃から親しんだ尾鈴の山よ、慕わしいな、秋も昔と変わらず美しい霞がたなびいている。
牧水の姉も都農に嫁に来た。これは何かの縁かも。もっと短歌に親しんでみよう。それにしても今日も尾鈴山は美しい。きっと明日も明後日もずーっと美しいじゃろね。
小辻󠄀 史(こつじ あや)
高鍋生まれ。夫と知り合い都農人となる。そして更に縁あってこのコラムを書くことに。趣味は宝塚歌劇団鑑賞と少しばかりの読書。結婚前は海外旅行によく行っていた。現在町内のデイサービスにて勤務中。
4月から町立病院で総合診療医として勤務しております枝元です。2020年にも勤務していましたが、当時は初のコロナ禍真っ盛りでした。今回は落ち着いて都農町での生活を楽しんでいます。
総合診療科は「病院のよろず相談所」で、生活習慣病の治療や、救急外来・入院の対応、訪問診療など幅広く診療しており、医療者の考えの押し付けにならないよう本人の価値観も大事にしながら最善の医療を目指しています。院内の整形外科、小児科、眼科の医師とも協力し、専門医療機関と連携しながら、住み慣れた家で長く過ごせるように頑張っています。
医学生教育にも力を入れており、全国でも先進的な12週間連続の長期滞在型実習を4年前から始めています。実習は4週間程度が一般的ですが、3倍もの期間を都農町に住み込みで行うことで、外来・入院・在宅の一貫した流れや町の生活・文化を経験することができ、大きく成長できるとともに、地域医療の楽しさ・奥深さを知ることができます。実習卒業生が、総合診療医として町立病院で勤務する日も近そうです。
総合診療医が不足している関係上、県内各地の医療機関で勤務・研修を行うため、1年単位で異動する医師が多く、ご不安に思われる方も多いかもしれません。病気や治療経過だけでなくその人となりも含め、丁寧に診療の引継ぎを行っていますので、ご安心いただけますとありがたく思います。
ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、都農町のお役に立てるよう努めて参りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
枝元 真人(えだもと まさと)
宮崎県出身。エンジニアとして勤務していたが、医師の道を志して宮崎大学医学部に入学。2024年に結婚し、都農町で新婚生活を満喫中。趣味はドライブ。
フラフラの効用
岡山県北部に西粟倉村という人口1300人の村があります。そこに数年前に移住した友人が資源循環型の平飼い養鶏に取り組みはじめ、昨年末から卵を生み始めたというので早速購入しました。
卵を割ってみるとまず、黄身の色がいつものと違う。きれいな「レモンイエロー」です。これは緑餌をたくさん与えているからだそう。臭みがなくやさしい味わいでした。100%国産の自家製配合発酵飼料を活用、おからや米糠、野菜くず、草刈りで発生する雑草なども含まれているとのこと。地域の未利用資源を循環させる素晴らしい取り組みです。
この友人とは十数年前岐阜に住んでいた時に出会いました。世の中には色々な卵がありますが、この卵は特別です。当時の切磋琢磨した思い出が甦り、応援したい気持ちや自分も負けられないという気持ちなど全部込みでこの卵はとっても「美味しい」のです。私は20代のころフラフラしていたおかげ(!?)で様々な人達と知り合うことができました。恩師やお世話になった方にはことあるごとに贈り物をします。都農に来る前に働いていた兵庫県の酒蔵には、酒造りが佳境を迎え気力体力ともに満身創痍の年末に必ずお肉を送ります。こういった関係性が私の人生に彩りを与えてくれています。
しかしこのような行為は一方で他者を支配したり、見返りを求めてしまいがちなど問題も含みます。『「利他」とは何か』(伊藤亜紗編、集英社新書)にはいかに他者と関わるかのヒントがあります。こういった根源的な問いについて考えることができるのもフラフラの効用かもしれません。
小松原 駿(こまつばら しゅん)
1988年東京生まれ。同志社大学経済学部卒。映像作家見習い、蔵人(清酒醸造)などを経て2020年都農町へ。現在ツノスポーツコミッション事業統括責任者。座右の銘は「そのうちなんとかなるだろう」(植木等)
都農っ子、誕生!
昨年末に、第二子となる男児を出産しました。産後まもなく「カンガルーケア」という母子のふれあいタイムが設けられ、そこで初めて授乳を試みたのですが、この時の赤ちゃんの視力は0・01程度。ほぼ見えていないなか、本能のままに懸命におっぱいを吸おうとする我が子。無事に出産できたことへの安堵と疲労感に包まれながら、命のたくましさを強く感じた産後のワンシーンでした。味覚や嗅覚はお腹の中で羊水を飲むことで育まれるそうですよ。
赤ちゃんの暮らしは、「飲む」「排泄する」「寝る」が主軸。小さいうちは胃袋も小さく、一度に母乳やミルクを飲める量も少ないので、こまめに授乳する必要があります。昼夜関係なく、2、3時間おきに「おぎゃああ」とお腹がすいたアピール。待たせてしまうと顔を真っ赤にして、さらに大きな声で訴え、目をギラギラさせて夢中で飲みます。そして母乳の出が悪いと怒る!飲む行為ひとつをとっても、真剣そのものです。訴えないと、飲まないと、生きることができないから。そのメッセージを受け取った私は、母であることを心身で自覚し、食を与え、お世話をする。そして命がつながり、育っていく。毎日毎日、その繰り返しです。まだ言葉では交われないので、授乳やお世話でのふれあいがコミュニケーションの機会となるのですが、この積み重ねがきっと、唯一無二の親子関係を育てていくのだろうなと感じています。
子育てサポートの手厚い都農町で、これからどのように育っていくのでしょう。小さな都農っ子の成長が楽しみです。
古部 祐子(ふるべ ゆうこ)
福岡県出身。大学卒業後、神戸・東京で情報誌の編集・制作に携わる。結婚後はイラストレーターとして活動しながらサッカー選手だった夫の栄養管理に従事。2020年に都農町へ。古いものを溺愛。焼酎はロック派。